みんな大好きTDRでラグタイムを体感してみよう!
皆さん、こんにちは!松尾 弥生(まつお やよい)です。
TDRってなんぞ…?と思われた方、ご安心ください。おそらく知っています。
東京ディズニーリゾート(Tokyo Disney Resort)の頭文字をとってTDRです。
さて、誰もが知るテーマパーク、ディズニーランド・ディズニーシーでラグタイムをより深く知ろうという
一見するとワケの分からんことを試みます。
しかし、ラグタイムはアメリカ合衆国で起こり、ディズニーリゾートを作ったウォルト・ディズニーはアメリカ人。
特に東京ディズニーランドは、アメリカの左側から右側に行くにつれて、過去→未来をそれぞれのエリアで表現しています。
このように考えると、それほどワケの分からんことでもない気がしてきませんか?
なお、お時間がある方は、この記事をご覧になる前に、ぜひこちら↓の記事を読んでいただきたいです!
今回は、この記事↑のサブとして位置づけます。
この記事を前提にお話を進めていきますので、お読みいただいてから戻って来て来たほうが
より、これからやろうとしていることの内容がよくお分かりいただけると思います!
それでは、TDRで見る・TDRで聴くラグタイムの世界へご案内いたしましょう!
まずはディズニーランドのあの場所から!
ディズニーランドにクリッター・カントリーというエリアがあります。
ここにある超有名なアトラクション「スプラッシュ・マウンテン」。ここから始めましょう。
東京ディズニーリゾート公式YouTubeチャンネルより
スプラッシュ・マウンテンはディズニーの幻映画「南部の唄」を元にしたアトラクションです。
はい出た!南部の唄!これ、DVDとか本当にどこにもなくて、松尾がいつかは観てみたい映画のうちの一つであります。
この映画はジョエル・チャンドラー・ハリスが1880年前半に出版した、およそ100を超える2冊の小話集を原作としています。
この頃のアメリカ南部は農業を主な産業としており、発展していた一方
土地の所有者と小作人との貧富の差は次第に大きくなっていきました。
これは、寄生地主制という
「土地の所有者が小作人に農地や種、生活必需品をを貸しだす見返りとして、その収穫した量の半分をもらう」
というシステムがあったためです。
お金を稼ぎたい小作人はたくさんの農作物を育てますが、どんなに頑張っても半分は持っていかれてしまう。
土地の所有者は賃貸料は払うものの、それ以上に安定した見返りを得ているので、どんどん裕福になる。というわけです。
そして、この小作人の多くは有色人種、主にアフリカ系アメリカ人でした。
彼らの先祖は、かつて奴隷としてアフリカから連れてこられた人々です。
アメリカの農業は南部が中心で、奴隷の存在は農場の運営に欠かせないものとなっていました。
少しずつ音楽に対する規制がゆるんできたため、彼らは貧しい暮らしを送りながらも
バンジョーやハーモニカ、ギターなど、持ち運びができる楽器を好んで演奏していました。
(これは、主人は家にいるため、小作人の多くは外で過ごすことが多かったからです)
貧しくてみじめな自分を、束の間でも忘れられる時間だったのかもしれませんね。
さて、そんな時代のアメリカ南部を舞台としている「スプラッシュ・マウンテン」
皆さんがライドしている間、ゆかいな動物たちや、音楽が私たちを楽しませてくれますよね。
こんな動物たちや
こんな動物たち
あー乗りたい。あー、行きたいよおおおおお…涙
ではここで、皆さんに質問です。
Q.この動物たちは、白人でしょうか?それとも黒人?それとも…?
キャラクターを人間として見たとき、彼らはどんな肌の色をしているでしょうか?考えたことがありますか?
充分前置きをしましたので、ここまで来れば、もう答えは見えてきますね。
A.だいたい黒人
先ほども申し上げたとおり、かつてアメリカ南部には、奴隷としてアフリカから大量の黒人が連れてこられました。
そしてその奴隷とされた人々を先祖に持つアフリカ系アメリカ人の多くが、この地で小作人として働いていました。
この背景から考えると、ほとんどのキャラクターたちは白人ではない可能性が高いのです。
では、このアトラクションで使われている音楽を見ていきましょう。
一番有名なのはやはりコレですよね!
ジッパ・ディ・ドゥー・ダー♪ ジッパ・ディ・エー♪
思わず口ずさんでしまう、誰もが元気になれる曲です。
もう一曲、聴いてみましょう。
「エヴリバディ・ハズ・ア・ラフィング・プレイス」これも耳にしたことがあると思います。
うさぎどんが「オイラが目指すのは笑いの国さ!」とぴょんぴょん飛び跳ねている姿が目に浮かびますね(^^)
では、この2曲を聴いたとき、どのような特徴が見つかるでしょうか?
まず、南部の小作人たちが演奏していたバンジョーやギター、ハーモニカの音色が聞こえますね。
メロディはとてもリズミカルで、シンコペーションが多用されています。
余談ですが、ここでバンジョーはドラムヘッドとギターがあわさったものでアフリカ系アメリカ人が作ったと言われています。
サステイン(余韻)が少ないので、演奏家はアルペジオといった和音を一つ一つ順番に演奏するワザを使ったり
早弾きで演奏して、この弱点とも言える特徴を克服しようとしました。
バンジョーの演奏に音数が多く、早弾きをするものが多いのはこのためなのです。
また、伴奏は主にギターが担当しているようですが、そのかたちは
ズン・チャッ ズン・チャッ …というマーチ風に聞こえます。
シンコペーションを多用したメロディ
ズン・チャッ ズン・チャッとマーチのような伴奏をしている…
あれ?この特徴はどこかで聞いたことがあるような?
そう、これはラグタイムの特徴と一致していますよね!
ということで「スプラッシュ・マウンテン」では、ラグタイムの源流となった人々の音楽が聞けるのです。
お次はディズニーシーへ!
さて、お隣りの東京ディズニーシーに飛びますと、アメリカン・ウォーターフロントというエリアがあります。
ここは、20世紀初頭のアメリカを再現している場所です。
実際に当時、まさにラグタイムが流れていた時代ですね。
中でも焦点を当てたい場所はニューヨークエリアと呼ばれている場所で、地図でいうと、ここら辺。
マクダックス・デパートメントストアを左へ入ると、左手にニューヨーク・デリや、劇場が見えて来て
突きあたり左にトイストーリー・マニアが、そして真正面にはお手洗いがあります。w
右手に入ると右手に海が、正面にはS.S.コロンビア号があり、左に進むと人気アトラクションのタワー・オブ・テラーがあります。
左に見える自由の女神が描かれているお店
ここがニューヨーク・デリです。
ここではラグタイムだけでなく、主に1920年前後から台頭してきたジャズや、ミリタリー・マーチを聞くことができます。
※ちなみに松尾的にラグタイムが一番聞けるTDRの場所は、ディズニーランドに入園してすぐのエリア、ワールド・バザールです。先に言えや。←
S.S.コロンビア号
さて、ここでもう一つ皆さんに質問です。
Q.頭の中で「スプラッシュ・マウンテン」で流れていた曲を、ピアノのみの演奏に置き換えてみてください。
もしそれが、この場所で流れていたら、どのように感じるでしょうか?
少し難しいかもしれませんが、想像してみてください。
「あれ?それほど、違和感がないな…」と思いませんか?
これは私の持論ですが、ラグタイムはジャンルというよりスタイルです。
バンジョー、フィドル、ギター、ハーモニカ、ピアノ、サックス、トランペットと使う楽器が変わっても変わらないものがあるのです。
アフリカ系アメリカ人の人々にとって、ラグタイムはあくまでも演奏スタイルの一種。
彼らにとっては、ずっと同じことをしてきただけなのです。
だから、ピアノ一般大衆化によって流行したラグタイムが淘汰されてジャズへと移行して
その特徴が引き継がれたということは、当然なのです。
東京ディズニーランドの「クリッター・カントリー」と、東京ディズニーシーの「アメリカン・ウォーターフロント」
この2か所を見ていくと、アメリカ南部で田舎者のアフリカ系アメリカ人ミュージシャンが演奏していたものが
やがてピアノで演奏されて大ヒットし、白人層に広く知られ、次第にジャズへと移り変わっていく…
というアメリカ音楽の歴史の片りんを巡ることができるのです。
TDRで体感するラグタイムの歴史まとめ
東京ディズニーリゾートで知る音楽の歴史、いかがでしたでしょうか。案外イケた…と思う。笑
TDRで体感するラグタイムの歴史まとめ
・スプラッシュ・マウンテンに登場するキャラクターは黒人の可能性が高い
・ここではラグタイムの源流となった人々の音楽が聞ける
・この特徴をピアノに置き換えてアメリカン・ウォーターフロントで聞いても違和感がない
・ラグタイムはジャンルではなく一種のスタイル
「スプラッシュ・マウンテン」に乗るときや待ち時間には
キャラクターや流れている音楽にも、ぜひ耳を傾けてみてください。
そしてそのうえで、思いきり滝つぼからダイブしてずぶ濡れになってください。←
「アメリカン・ウォーターフロント」の街並みを歩く際は
ぜひ通りで流れている軽快なラグタイムやジャズに心躍らせてみてください。
きっと、アメリカ音楽の辿って来た歴史を体感できますよ♪
最後までお読みくださり、ありがとうございます!!